1 保育園だけではない。今の組織の問題点
保育士の園児暴行事件が耳目を集めています。少し前には保育園のバス園児放置事件もありました。
事件を起こした人の不注意、自覚不足、故意などが直接の原因であることはもちろんなのですが、いつも指摘されることがあります。「人手不足」です。
富士山麓のバスの事故も人手不足が遠因だと言われ、保健所のコロナ対応が間に合わないのも人手不足と言われていました。
今の日本の組織のほとんどは、少子化が進み昔のように豊富に人材が供給される訳でもなく、人件費も豊富に使えないですから、人手不足が前提です。
ただ、それに加えて問題なことがあります。
「人が増えないのに、仕事が無限に増える」ということです。
昔に比べて、本来の業務が複雑、高度になったということはもちろんあります。
ただ、それだけではなく、情報の管理とか危機管理とか昔はなかったような業務が増えています。
また、働き方改革などで実働時間が減ることでやる事の密度が増えました。
加えて、ミスがあると執拗に叩く昨今の風潮のために組織が守りに入ってしまい、アリバイ作りの仕事がどんどん増えています。何にでもパスワードをかけたり、帳簿をつけたり、報告書を要求したり、読み切れないようなマニュアルを作ったり・・・。
限られた時間で人手は増えないのに、本来の業務以外の仕事がどんどん増えている。そうすると、当たり前ですが、本来の業務に充てる時間も人手も減ります。
本来の仕事をしたくても、それ以外の仕事に忙しすぎてできない。
これは、私が働いていた組織で起こっていたことですが、おそらく保育園も含めてどこの組織でも似たようなことが起こっているのではないでしょうか?
逮捕された保育士も忙しかったと述べているようです。
2 問題を解決するための本質的な対策
保育士としての本来の仕事は、園児に質の高い保育を行うことです。
常日頃、質の高い保育とは何なのか考えていたとすれば、保育園で行うべき保育のイメージが共有されますから、暴行事件などということは起きなかったと思えてなりません。
しかし、そういう時間は無かったのだと思います。
仕事が増えるのに人が増えない今の社会では、無駄な事務を徹底的に減らしながら、本来の仕事がどうあるべきなのかを考えたり、あるべき仕事の姿に近づけるための努力をし続ける必要があります。
アリバイ作りのための仕事などしている場合ではないのです。
3 保育園問題で心配なこと
おそらく、今後、保育の質を高めるにはどうしたらいいか検討をしたり、実践したりするようになるかというと、そうなならないと思います。
問題を起こした保育園は、アリバイ作りのために、どういう対策を取ったかを社会に示す必要がありますから、「バスを降りるときの手順とかマニュアル作り」、「暴行をしないための保育士の管理の方法の検討」などの仕事が更に増え、現場はもっと忙しくなると思います。
更に、こういうことが二度と起こらないようにするために、全国の保育園で色々な管理業務やマニュアルが増えることになります。
全く同じことが職場で起こるのを、何度も見てきました。