スタイルのある生活~早期退職50代男子ハタさんの試行錯誤~

公務員を退職するに至る経緯からその後の生活まで

森友文書改ざん事件の佐川元理財局長が損害賠償責任を負わないのはおかしくないか。

昨日(令和4年11月25日)午後、森友文書改ざんをめぐる事件で亡くなった関東理財局職員の奥さんからの損害賠償請求が棄却されたとのニュースが流れました。

 

記事を見る限りでは、佐川氏側は過去の最高裁判例を挙げ、公務員の職務中の行為については国が賠償責任を負い、個人の賠償責任は問えないと反論していて、これを大阪地裁が認めたようです。

 

佐川氏側が引用したこの判例は、ある意味有名なものです。

最高裁判例の内容は、仕事をしていて組織としてきちんと意思決定したものについて個人が責任を負うというのはおかしいというものです。仮に間違えた判断をしていても「組織として判断」したのだから、組織が責任を負うということです。

 

今回の事案では、国の組織が改ざんするという意思決定をしていたのだから、それに従った佐川元理財局長には責任はないということになると思われます。

だからこそ、国は、請求を認諾した(認めた)。

そういうストーリーであるように思われます。

 

でもおかしくないですか?

 

実は、私も公務員のころ国とともに訴えられたことがあります。「ええっ!」って思わないでください。自分の思いどおりにならないと国と担当の公務員を訴える人が一定数います。だから、そういう国家賠償訴訟は、それほど珍しいことではないのです。冒頭で「有名な判例」と言ったのはそういう意味です。

そういう訴訟では必ず引用される最高裁判例です。

普通に仕事をしていたのに訴えられたという場合に、「公務員は個人としては責任は負わない」というのが最高裁判例なのです。

 

よく考えてみれば当たり前だと思うのですが、最高裁判例は公務員が「通常の仕事」つまり「通常の組織としての意思決定に従った仕事」をしている状況を前提にしているのだと思います。

私のときのように普通に仕事をしていたけど、訴えられたという状況が想定されているのだと思います。そういう場合に他人に損害を与えてしまうことがあっても、個人は責任を負わない、そうでないと怖くて仕事なんかできません。

ちなみに、私のときにも「個人としては責任は負いません」という反論をして、勝訴判決をいただいています。

 

 

でも、今回の場合は全然違います。改ざん指示などという意思決定は、異常な意思決定です。最高裁判例の想定の範囲外でしょう。

 

たとえ組織の決定であったとしても、自ら改ざん指示を行い、現場が強く抵抗していたにもかかわらずこれを強制して、担当者を自殺に追い込んだような極端な場合に、その指示をした人の責任を免れさせるための判例ではないと私は思います。

極論ですが、組織から命じられて人を殺してしまったら、この判例によって国が賠償責任を負って、個人は賠償責任は免責されるのでしょうか?

 

更に、理財局局長というのは、改ざんするという意思決定について、直接大きな関与ができるポジションですから、今回の件で組織が明確に違法な行為を行う意思決定を主導的に果たしたと考えられます。そういう場合に責任を負わないなどという法解釈は、まったく納得できません。

 

それに、組織の末端の公務員が大きな間違いを犯した場合、確かに最高裁判例によって国家賠償としては、賠償を請求する人に対して直接責任は負いませんが、損害賠償をすべき国から求償(損害賠償請求)されることがあります。

今回は、大きな間違いどころか犯罪行為を主導的に行っているのですから、国からの求償という面倒な手続ではなく、直接責任を負うというのが自然だと思います。まあ、今回の件では国から求償されるかどうかも怪しいものですが。

ごく控えめに言って、犯罪行為を行ったら個人としても責任を負わなければならないという程度の自覚は公務員の幹部であれば持ってほしいものですね。

 

細かい法律論は置くとしても、組織的な改ざん指示に対して勇気をもって反対した公務員の死を救えない法律、判例ってなんなのでしょう。国が賠償する(金を払う)からいいということでしょうか。組織が悪いことして、詳細は明らかにしたくないから、訴訟手続では「認めます、金は国が払います。」と言って訴訟を終わらせて、それでいいのでしょうか。組織が悪いことを意図的にやって、税金から賠償金払いますから終わりですということでいいのでしょうか。

 

夫は法律に守ってもらえなかったのに、佐川さんは守ってもらえるのか」というコメント、私は、胸に刺さりました。

死んでこの扱いでは、多くの公務員は誠実な仕事なんてできません。

 

 

自分の経験も踏まえて、少し考えてみました。

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