スタイルのある生活~早期退職シニア男子ハタさんの試行錯誤~

公務員を退職するに至る経緯からその後の生活まで

第7回(最終回):未来展望編「日本経済の現状を目の前にして我々はどうすべきか?」

1 私が日本株に投資をしない理由

日銀の金利1%引き上げの記事をきっかけに、ここまで6回にわたって日本経済について考えてきました。今回(最終回)は、ここまで考えてきた日本経済の問題点や課題を踏まえて、個人としてどうすべきかを考えます。

 

前回までに見たとおり、現在の日本経済は、政府や日銀が「どうぞお金を使ってください。」と企業に追い風となる政策を捨て身で行ったにもかかわらず、民間企業の方は内部留保をため込んでいる。だから、イノベーションも起きない。そして給料も上がらないから、若者は組織を見限って去っていく。

これが30年続いた停滞の今の姿。

ここまでは、おそらく間違いないと思っています。

 

だけど、こういうことを踏まえて、「今、日本企業がどうしようとしているのか。」ということに関しては、今回調べて見ましたが、私にはわかりませんでした。

日本企業の現在の意思決定や今後の展望などについて、オープンになっているメディアの記事は無いか、フォーマルな発表はされていないかと探してみました。自分でも検索したし、Aiも駆使しました。

例えば、日本の企業に対して株主が「内部留保をとりくずして将来の投資にまわせ」と言っているんじゃないかとか、日本の企業が内部留保についてどう考えていて、これからどうしていこうと考えているとプレスリリースしているんじゃないかとか。前回考えた日本企業の問題点がどうなっていくのかという論説記事とか。

散々調べてみたけど、結局そういうものはありませんでした。まあ私の調査能力の限界もあります。なにせ素人シニアですから。

だけど、少し違和感を感じます。これからの日本の株式に投資をするかどうか考える上で、すごく重要な情報なのに、なぜどこにも出ていないのでしょう?

そういうことは考えていないのでしょうか?

発表する必要のない情報ということでしょうか?

 

とにかく、現時点で言えることは、私ではこの辺りは情報を取ることができないということです。

こういう大事な情報を入手することができない状況では、日本の企業の株式に投資することはできません。

 

2 日本株に投資をしないのはネガティブな態度なのか?

最近は「オルカンやS&P500に投資をしたらいい。」と言う人が出てきました。半分はよかったなと思います。だけど、もう半分は不満があります。

 

よかったなと思う点は、やっと日本の人も投資ということを本気で考えるようになったこと。

不満な点は、最近のアメリカのインデックス投信への投資を奨める多くの言説が「生活防衛のため」とか「もうかるから」とかと言っているところです。これって経済の理屈から言えば「マネーゲーム」(*)と言えるんじゃないか。私はずっとそう思ってきました。

*一般的には「短期的に利ザヤや高金利を狙って資金を動かすこと」を言います。インデックス投信は長期を想定している商品ですけど、利ザヤを狙っているだけという態度は同じだと思います。

 

私自身、このブログで、長年勤めた公務員を辞める際の生活防衛という見地から、長期の観点からどう利ザヤを稼ぐか、いろいろな説明をしてきました。だけど、そのことについては常に違和感を感じていました。

だって、日本株がだめだから、利益が出る、利回りのいいアメリカの投信に投資をするっていうのって、何だか後ろ向きの態度ですよね。

 

本当は語りたかったことがあります。

ここまで7回に分けて考えてきたような日本の状況があります。本当は日本の株式に投資をしたらきちんと利益が出るような国であってほしいと私はずっと思っています。だけど、今の日本の企業の意思決定はブラックボックスです。少なくとも私にとっては情報を集めることすらできなかった。だから、今は投資できない。

だけど、将来的には日本経済に自分も貢献したい。

そのためには、どうしたらいいか。

 

私は、こう考えています。

世界というスケールで市場を考えます。今はアメリカの企業が絶好調です。だから、そこに(アメリカの投信)に投資をして自分自身が利益を出してきました。そして、長年続けて出た利益が相当あります。今、それを日本経済に還元するようにしています。

日々の生活で、旅に出た時、あらゆる局面で、自分が応援したい企業のモノを買ったり、サービスを利用するようにしています。できる限り、「内部留保をして賃金を上げない会社」のモノやサービスは利用しないようにしています。

内部留保に頼ろうとしない企業は、商品やサービスがどんどんブラッシュアップされるように感じます。そういう店やホテルなどに行きます。「ここを応援したい。」というところに行くようにしています。

そういう視点で生活を組み立ててみると、見えてくることもあります。そういう企業は若者が生き生きと働いている。そういう傾向が顕著です。

 

私の感想にすぎないけど、そういう企業があれば、まだまだ日本の企業も捨てたものではないと感じます。将来そういう企業がもっと利益を出せそうだという情報を得ることができたときには直接投資をしてみたいと思います。

 

とりあえず今は自分が投資をすることで、アメリカの利益を吸い上げ、その利益を日本の応援したい企業にまわす。これって、ダイナミックな資本主義経済に自分も参加していることになりませんか?

 

こういう見方、賛同してくれる人いたらいいな。

 

 

第6回:現状編「『日本経済の今』はどうなっているか。」

1 素人の素朴な疑問

内部留保をため込む日本の企業というところまで見てきました。

繰り返しになりますが、本来資本主義社会が想定しているのは、

①借金をする(借金)

⇒②本業に投資する

⇒③借金の金利を上回る利益を出す

⇒④金利支払、次への投資、株主への還元、賃金に使う

このサイクル(投資と分配のサイクル)で成長していくという流れになります。このサイクルの中でイノベーションが起こり大きな利益を生むことで、企業も株主も労働者もウィンウィンの関係で共存していくことができるわけです。

だけど、今の日本ではそうなっていない。借金をしない。投資は少なくなる。利益も小さくなる。次への投資も少なくなる。賃金は上がらない。

 

次の疑問です。これは将来的に改善はされないんでしょうか。

 

2 日本企業への外圧

メディアであまり取り上げられないニュースを見てみたいと思います。

「東京証券取引所(東証)が2023年から進めている「PBR1倍割れ(解散した方がマシな状態*1)」の是正要求が、2026年に入り、さらに締め付けが厳しくなっている。

東証は、これまで単に「改善計画を出したかどうか」だけを載せていた企業リストを、2026年から「具体的な改善内容を横並びで比較できる仕組み」へ改定した。これにより、対策を怠っている企業の経営者は「市場への不誠実な姿勢」が明らかにされ、投資家から見放されるリスクが高まっている。」

business.nikkei.com

 

簡単に言うと、「東京証券取引所から『ちゃんとやっていない企業のリストを公開する。』(*2)と各企業は言われたということ。ちゃんとやっていないというのは、内部留保も含めた資産をたくさん持っているのに大した利益を出せていないということです。

*1 PBRについての詳しい説明は省略しますが、PBRが1を切っているというのは現在の企業のすべての資産を売った価値株価に発行株数をかけた価値を比べたら、資産を売った価値の方が大きいということ。成長している会社はPBRが当然1を超えます。将来成長するだろうという期待が株価を押し上げるからです。逆に言うと、資産(内部留保を含む)をたくさんもっているのに利益が出せない企業は1を切る可能性が高まります。

*2 東京証券取引所も株式会社です。世界の投資家から日本の上場企業は魅力が無いと判断されると、投資マネーが集まらず、利益が出ない構造です。だから、上場企業が魅力のあるものでなければ困るという事情があります。

 

3 日本企業は変わるのか?

変わらないとまずいことは誰が見ても明らかです。

守りに入ってばかりで利益が出せない。イノベーションも起きない。だから、日本企業には投資する魅力が無い。そして、相応の給料も払わないから若者や優秀な人材が抜けていっている。ますます「大丈夫か?」って思われている。

今の日本企業はそういう状況だと考えられます。

 

そして、日本企業は依然厳しい状況にあります。東証のこれだけの圧力にもかかわらず、いまだに大きくは変わっていない。

fin-x.jp

 

ただ、私も日本人なので応援する気持ちはあります。2に書いた圧力があったり、自助努力で日本企業がよみがえってくれたらいいと思います。

じゃあ、個人として、私たちはどうしたらいいのか?次に考えてみたいと思います。

 

第5回:核心編その2「日本の経済界の根本的な欠陥」

1 現在の日本経済への疑問

前回、失われた30年といわれる期間中に政府と日銀が異次元の金融緩和を行い、通貨が日本市場にジャブジャブになったことを述べました。

その後、安倍政権のときにアベノミクス政策が取られました。法人税減税を行い、金融緩和を続けるなどしました。

これは民間企業に「お金を借りてください。どんどん融資します。税金も安くします。」と言っているようなものです。でも、景気は上向かなかった。

 

2 民間企業はどう動いたのか?

こんなに超追い風の状況の中、日本の企業(大企業)は、超低金利で調達した資金はどう使ったのか?

実はこれは私こねくり回すまでもなく、内閣府のレポートに出ています。

www5.cao.go.jp

 

これを私なりに要約してみます。

結論としては、以下のような方法で内部留保を積みあげたということだと思います。

(1)低金利で借りたお金でそれまでの借金を返済した。

低金利で融資を受けることができたので、それまでの金利の高い借金を返済しました。通常であれば身軽になったところで次への設備投資や研究費などに向かうはずですが、必ずしもそうならず、いざという時に備えるお金などにしてため込んだ。

 

根本的なことを言えば、資本主義社会の企業のモデルは、

①借金をする(借金)

⇒②本業に投資する

⇒③借金の金利を上回る利益を出す

⇒④金利支払、次への投資、賃金に使う

このサイクル(投資と分配のサイクル)で成長していくという流れになりますが、本業で利益を出すよりも優先して借金の返済をした。

借金をするとバブルがはじけた時のように急に返済を迫られるから、貯金(内部留保)をする。そして、借金をせず貯金の範囲で経済活動を行おうとしたということです。

(2)投資を国内にせず国外にすることにしたという理由で現預金とした。

素人の私としてはちょっと馴染みのない話ですが、海外の会社をM&Aするために資金を調達しておく必要があると言うことで内部留保をしたという説明がされることがあります。

でも、M&Aは必ずしも現金でやり取りをしなければならないわけではなく、さらに言えば、日本の大企業の多くがM&Aを盛んに繰り返しているという話を聞いたことが無いのは私だけでしょうか?

要するに口実を作って、いざという時のために貯金(内部留保)をしたという感じを受けます。

(3)本業の利益はコストカットで生み出した。

(1)の説明と被りますが、本来の利益の出し方(借金⇒本業で利益⇒利益を分配)という流れではなく、本業の利益を賃金を上げないなどコストカットによって出す体質になったということです。そうやって低金利で借りたお金を活用することなく、コストをカットして、出した利益は内部留保に積み上げた。

 

3 日本経済の現状

数字を見てみることにします。

市場に出回っている通貨の量を示すマネーストック(M3)という数字があります。

これが大体1600兆円。

それに対して日本企業の内部留保の額が約600兆円。このうちの現預金が300兆円。(*)

* 内部留保600兆円のうち、実際に動いていない現金などが300兆円ということ

つまり、1600兆円のお金が世の中に出ているのに、企業が動かしていないお金が300兆円あるということです。いくら日銀が金利を下げて資金を融通しやすいようにしてもお金は市場に出ない。

 

他の数字とも比較してみます。

・国家予算が約110兆円

・日本のGDPが600兆円

国家予算の3倍違いお金が動いていない。国家予算を使って経済対策をしても、その3倍をため込んでいると見ることができます。

 

通常の市場であれば、超低金利でお金を借りることができて、税金も安くなり、円安になっている状態というのは、日本の基幹産業の多くを占める輸出産業にとって超追い風です。

国が苦労をして経済対策を打っても、民間企業は本業に精を出さず、それどころかそれを利用してため込む構図です。

 

これほどの金額をため込んでいるのなら、ジャブジャブにしてもハイパーインフレが起きないことも理解できます。通貨が市場に出ていないわけです。

 

4 企業が内部留保をする理由

様々なことが言われますが、大きな問題として必ず出てくるのが、バブル崩壊が経営者に与えた影響です。

バブルまでは絶好調だったのに、バブルがはじけた瞬間銀行による貸し剝がしが横行するようになりました。前述した借金をして利益を出すというサイクルを取れなくなってしまったのみならず、返済を迫られどんなに大きな企業でも経営危機に陥ったという体験が、経営者に借金ではなく内部留保の範囲で本業をやる。できるだけ内部留保をためこむという体質に転換させたということです。

これは現実に起きたことで私も理解できます。だけど、私にはどうしてもわからないことがある。

理解はできるけど、一体何年前の話?

 

そういう制度が問題なら変えたらいいじゃないかと思います。ここでは詳しく述べませんが日本の銀行の特殊性もあると思います。だけど、大企業を主体とする経済団体は政治に強い影響力があります。それを使って改善することを誰も考えなかったのか?少なくとも、そういう国の大きな体制を変えようという問題提起がされたと私は聞いたことがありません。

 

逆に、自分は雇われた社長だから、任期中大きな失敗をしたくないという匂いを感じます。私の感想ですけど。

そして、推測ですけど、メディアもこういうことはスポンサーに配慮してほぼ全く報道しないんじゃないですかね。

 

私の感想はともかく、日本の経済の本質的な問題点がここにあると私は考えています。

次回は、このような理解を通じて、自分自身が個人として取るべき態度について書いてみたいと思います。



 

 

第4回:核心編その1「なぜ日銀は金利を上げられないのか?」

1 前回のおさらい(金利を上げない理由の一つ目)

前回の記事で日銀がなかなか金利を上げないことについて、一つの理由を考えました。日本全体の経済情勢が上向かない中、物価が上がったからと言って直ちに金利を上げたら、政府の経済政策に水を差してしまう。日本全体の状況(失われた30年)を考慮したら、経済対策の重要性は明らかです。物価が上がったからと言って、直ちに「はい。金利を上げます。」とは言えない。

だけど、これだけ物価が上がってしまうと上げない訳にはいかない。物価の上がり方を考慮したらもっと上げたっていいくらい。

このジレンマの中、今回の金利1%というのは、日銀としてギリギリのラインなのだろうと私は思います。経済対策に水を差すことなく、金利を上げた実効性を最大限にするために、日銀は記者会見で「これからも状況を見て、金利を上げる可能性がある」とアナウンスして、口先介入のようなことまでしている。

「まだ上げるかもしれない。」と言うことで、金利が上がった効果を実効性あるものとする反面、上げ幅は最小限にして日本経済に対する悪影響を最小限にとどめる。そういうことだと考えられます。

 

2 日銀が金利を上げられないもう一つの理由

1の理由も確かにあると思うんですが、実は金利を上げることに消極的にならざるを得ないもっと本質的な理由があります。

これについては、過去の記事に答えを書いちゃってます(以下リンクを貼りました。)。

簡単に言うと、国債の発行残高が1110兆円(財務省の見込みで2026年度末で約1145兆円)もあるから、金利をおいそれと上げる訳にはいかないんです。金利が上がると、国債の金利も上がるから、政府の返済額が増えるんです。そうじゃなくても膨大な額の借金があるのに、さらに返済が増えるのは国の存亡にかかわる。これが、現在の日本の事情です。

だから、日銀もなかなか金利を上げなかった。

hatasan2.net

これは前回書いた政府の政策に水を差さないように配慮するという以上の重みのある根本的な事情かもしれません。

言葉を代えて言うと、これからも日銀は金利を上げられないとすら言える異常事態です。

 

3 日銀が金利を上げられない状況になったのは政府が悪いのか?

(1)国債を発行したときの状況

ここまで考えて、「なんでこんな状況になってしまったのか?」という疑問が浮かびます。国債を多く発行してきた政府が悪いのでしょうか?

国債は失われた30年の期間中に多く発行されました。これは景気対策、社会保障関連費、コロナ対策経費などを賄うためだったと言われています。税収だけではとても足りなかった。でもやらなきゃいけないことがあるという判断。

それはわかる。

(2)どうやって国は資金を調達したのか?

でも、国債をそんなに多く発行して買ってくれる人がいたんでしょうか?

一般に国債は他の金融商品と比べると利回りは悪い。しかも日本は当時から国債発行残高が多く、平たく言えば借金まみれ。そんな国の国債を大量に買う人はいないはずなんです。

 

じゃあ。どうしたか。国債を買ってくれたら、その国債を必ず日銀が引き受ける(買う)という約束をした。前回の記事で、失われた30年の真っ最中に行われたゼロ金利、マイナス金利政策を「異次元の金融緩和の一部」と言いました。つまり、マイナス金利政策以外のもう一つの中身がこれです。

この約束で日本の国債は必ずもうかる金融商品になりました。国債を買って日銀に転売したら必ず利益が出る。そして、この仕組みを利用して民間の銀行が多くの国債を買うことになったわけです。

異次元の金融緩和の中身として、①国債を政府が発行する、②民間の銀行が買う、③民間の銀行が日銀に売る、ということが行われるようになったということです。

(3)国債を日銀が買うことに問題はないのか?

買うこと自体には問題はありません。日銀法33条で物価安定のため国債を買うことができると定められています。市場に出回っている国債を日銀が買えば通貨量を増やすことができます。

(4)「国債を買うと約束すること」に問題はないのか?

大アリです。

まずは、前提です。財政法第5条において、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない」とされています。つまり、日銀が政府の発行する国債を直接買ってはいけないということです。

これはなぜなのか。日銀の存在理由に立ち戻って考えます。日銀は政府が野放図に通貨を増やすのを防ぐために独立した組織として設立されました。政府とは別の観点から判断して通貨量をコントロールするためです。

日銀と政府が結託して日銀が国債を買えば、政府は無限定に資金調達ができることになってしまいます。これは日銀の存在理由を脅かす。だから、日銀が政府から国債を買うことは禁止されているのです。

 

だとすると、現在行われているのは、一度市場に出た国債を買い取っているんだから問題ないと形式上は言えます。

しかし、通常は日銀は物価安定のため必要な量だけ国債を買います。だから、法律上も市場から国債を買うことは許されている。だけど、政府の発行した国債を必ず日銀が買うと約束することはこれを無意味にします。政府から直接国債を買っているのに等しい。

 

日銀の存在意義を損なわせる政策だったけれど、それを約束した日銀もその政策に協力した共犯とも言える。政府は景気回復のため、日銀はデフレから脱却するという目的のために手を組まざるを得なかった。

日本の経済はそこまでせざるを得ないくらい傷んでいる。

(5)そこまでして通貨量を増やしたのになぜインフレが起きなかったのか?

現在、日本の市場には過剰な量の円通貨が溢れています。「ジャブジャブ」と言われることもあります。それなのに景気は良くならなかった。これはなぜなのか、次回考えます。

 



 

第3回:問題提起編「今の日本経済一体何が問題なのか?」

日銀の当座預金金利が31年ぶりに1%になったとニュースになっていることに関連して、日本の経済情勢について掘り下げています。日本の経済を理解することは、個人がどういう投資戦略を取るかの重要な前提になると私は考えています。

日銀の役割は前回の記事で考えましたが、日銀の役割との関係で金利1%ということをどう見たらいいんでしょうか。何か問題があるんでしょうか?

 

1 金利がこんなに低くて大丈夫なのか?

前回触れたように、日本の金利は諸外国と比べると最低水準です。アメリカが4%弱。ここで考えてみると、民間の銀行に預金をする場合も、日本よりアメリカの方が金利が高くなります。とすると、様々な要因はあるものの、単純に言えば、日本で預金するよりアメリカで預金した方が金利が高くて得をします。だから、円が売られてドルが買われる動機となる。そうすると円安圧力が高まる。

現実に今、円安の流れが止まりません。そして外国から購入する時に原材料費が割高になっています。だから、日本国内の製品は原材料費が上がることで値上げをせざるを得なくなります(コストプッシュインフレ)。

これが、国民全体の負担を増やしています。「金利が1%になって住宅ローンの支払いが大変」などと金利を上げることを批判している場合ではありません。

 

2 そもそもなぜ日本の金利はこんなに低いのか?

ここに日本の特殊事情があります。日本はバブル経済が弾けてから30年余という長い間、経済が成長しませんでした。政府は何とか経済を浮揚させようと積極的に経済対策を打ちました。でもそれでも景気が回復に向かわない。

一方、日銀としても構造的に物価が下がっていた(デフレスパイラル)ので、金利をどんどん下げていき、ついにはゼロ金利、マイナス金利まで下げたわけです。「異次元の金融緩和」と言われる動きの一部です。民間の銀行がいくらでも融資しようとしたらできるようにした。そして、それはごく最近まで続いた。

だから、基本的に日本の金利は低い。

 

3 なぜ金利1%があたかも高いかのように言われるのか?

「金利1%は高い」と報道されたりするは、30年もの間金利がゼロとかマイナスだったから、「それに比べたら」という意味合いはあります。でも、それ以外にも理由があります。

 

まず、経済対策を行う政府としては、金利が高くなると市場に出るお金が少なくなって、景気刺激策を打っても効果が相殺されてしまいます。だから、できるだけ金利は低い方がいい。政府と日銀は対立する関係にあるわけです。

だから、金利1%であってもそれが問題だというイメージ操作をするような記事が出てくる。推測ですけど。特に、現在の政府は積極財政政策を取っていますから、ここで金利を上げるとそれに水を差される。

 

4 日銀は更に金利を上げられるのか?

(1)物価が上がり始めてから相当の期間、日銀は金利を上げませんでした。ここに来てやっと上げたという印象です。しかも、今回金利を1%に引き上げるのも植田総裁が病気休暇中に審議委員の多数決で決まったという経緯がある。このことは何を意味するのか?

(2)日銀は、今、相当難しい立場にあると思います。

失われた30年の間、政府と日銀はある意味協調していた。大局的に見ると、日本の経済の停滞は明らかだから、政府は積極的に財政政策を打って市場の通貨量を増やした。日銀もデフレを脱却するために金利を下げて通貨量を増やしてきた。政府と日銀は事実上の協力関係にあったから軋轢は無かった。もちろん、日銀はマイナス金利とかその他の極端なことを本当にやっていいのかという逡巡はあったと思います。でも、基本的には概ね世の中から求められることをやっていたと言える。

ところが、今、日本の株価が上がり始めて、物価も上がり始めた。そうすると日銀は金利を上げて、通貨を減らす必要がある。

ただし、ここで問題が出てきます。株価が上がり物価が上がり始めることは、通常であれば景気が回復基調にあることを意味します。しかし、今の日本では賃金が上がらない。だから、政府は積極財政政策を取って何とか賃金が上がるところまで景気を良くしたい。だから通貨の量を増やしたい。

(3)この矛盾した状況をどうしていくかという大きな課題が今の日本にはあります。

物価の抑制のためには日銀は金利を上げなきゃいけない。だけど、政府に気を使って現実問題上げられないというジレンマがある。だから、物価はまだまだ上がる可能性があるけれど、今後日銀が金利を更に上げられるかどうかは、不透明です。

どうするのか、日銀の中でも意見が割れているんだと思います。日本経済全体を見て政府にある程度忖度をする意見がある一方で、日銀本来の役割である物価の安定を重視する人もいる。今回利上げに賛成した委員は物価の安定を重視したということでしょう。

 

5 なぜ株価が上がるのに賃金が増えないのか?

さらに根本的な問題として、株価が上がっていて企業の業績が良くなっているのに、賃金が上がらない構造があります。これは別の記事にしたいと考えています。

 

6 日銀が金利を上げられないもう一つの理由

日銀が金利を上げられない大きな理由がもう一つあります。国債問題との関連です。

これも別記事にします。

 

大枠としてはこんな感じで、日本経済には多くの問題、課題があります。

だけど、メディアはこれを報じることはほとんどありませんし、メディアに登場する専門家もきちんと説明しない(意図的?)か、説明しても専門用語を使ってけむに巻く。そういうことをやっているように見えます。

次回以降、日本経済の問題点のうちでも、もっとも大きいと考えられる点について、私が考えたことを書きたいと思います。これは、私が日本の株式等に投資をしない理由と重なります。

 

第2回:基本編「日本銀行って何のためにあるのか?」

1 はじめに

いつもながら、経済素人の私が、難しい金融理論や経済の知識ではなく、学校で習ったり、ネットをちょっと検索したら出てくるような基本的な原理原則を前提に自分の頭で考えていきたいと思います。

メディアに登場する経済の専門家のように小難しい理屈を捏ねたり、細かい議論でけむに巻くようなことはしません。

2 日銀は何のためにあるのか?

一般に通貨量をコントロールすることで物価を制御することができると考えられています。通貨の量が増えると物価を上げる圧力がかかります。通貨の量が減ると逆に物価の下げ圧力がかかります。これが理論的な前提です。

そして、日本銀行(日銀)は何のためにあるのか?

日銀法2条には「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」と書かれています。つまり、日銀は物価の安定のために通貨などの調整を行う機関なんです。ここが出発点。

 

日銀法で、なぜこんなことが定められているかというと、・・・。

通貨の発行を、日銀のような独立した銀行ではなく政府に任せるという国の仕組みも考えられます。だけど、これは歴史的に大失敗してきた。ワイマール時代のドイツ、ジンバブエ、古代ローマなどでは、政府が通貨を際限なく発行した結果コントロール不能なインフレ(ハイパーインフレ)になった。つまり、通貨の量が増えることで通貨の価値が低下して、物価が上がりすぎて制御不能になってしまった。

戦後の日本でもこれと同様のことが起こりました。だから、政府ではなく独立した国の銀行、すなわち日銀に通貨の量をコントロールさせる制度ができたということです。

 

3 日銀がやること

通貨の量を調整するために行うことが3つあります。高校生の頃、政治経済で習った気がするけど・・・。

 

(1)公開市場操作

 市場に流通している国債を日銀が買い取ることで、国債を買った時の代金が市場に流れて、通貨の流通量が増えます。

(2)日銀当座預金の金利の調整

 民間銀行は日銀に当座預金の口座を持っています。その金利を上げると民間銀行は日銀に預けているだけ(ノーリスク)で金利分を儲けることができるから、顧客に貸し付ける時には更に高い金利で貸すことになります。そうすると貸出量が減り、市場に出回る通貨の量も減ります。逆に金利が下がれば、通貨量は増えます。

(3)法定準備金の上げ下げ

 民間銀行は日銀の定める法定準備金額を日銀に預けなくてはなりません。これを増やすと民間銀行の使えるお金が減り市場の通貨も減ります、逆に法定準備金額を減らせば市場の通貨が増えます。

 

最近は、(3)はあまり行われていないみたいです。

 

4 今、日銀がやろうとしていること

目を転じて、今の日本を見てみます。

物価が目に見えて上がっています。インフレが始まっています。体感的には2倍になった食料品も珍しくない状態です。じゃあ日銀はどうするべきか。答えは明らかです。金利を上げて通貨の流通量を減らすしかない。

物価高騰の昨今の情勢を見たら、日銀が金利を上げることの方が自然なんです。

前回の導入で紹介した記事について言えば、30年ぶりであろうが、住宅ローンの金利が上がろうが、日銀はむしろ自らの責任を果たそうとしているだけとも言える。

 

第1回:導入編「メディアの利上げ報道、なんかズレてない?」

最近、「日銀が金利を1%に引き上げた。」というニュースがありました。メディアの論調は、「31年ぶりの高水準」とか「銀行ローン世帯を直撃」等と否定的です。

 

なんか違和感を感じる。

 

まず、「31年ぶりの高水準」と言っても諸外国に比べると最低水準。ちなみに日本の1%に対して、アメリカは4%弱です。

前にも述べましたけど、様々な要因はあるものの、金利差が大きいと円安になる圧力もそれだけ大きくなる。そして、現実に今、円安になっている。政府が為替介入をしても円安の流れは止まらない。

もっと上げた方がいいじゃないかと思うくらい。

 

次に住宅ローン世帯を直撃という言い方。確かに住宅ローンを組んでいる世帯ではローンの金利が上がって支払いがかさむことになります。だけど、だから金利は上げない方がいいという理屈は通らない。

金利変動型の住宅ローンを組んでいた人たちは、これまでの歴史的な低金利の恩恵を受けてきたわけです。そして、ローンを組む際には「これから金利が上がることもある」という説明は受けているはずです。もちろん、「30年もの間、金利が異常に低かったから上がるとは思っていなかった。」と言いたい気持ちはわかるけれど、それは経済という視点から見たらちょっとね。(*)

* 住宅ローンは一生に一度の買い物に関連するもので金額も大きく問題として意識されやすい、報道もされやすいということもあるでしょう。それは理解できますが。

 

日銀には役割があります。日銀法には「物価の安定」とあります。現在、日本では物価が上がっています。だから、金利を上げたということです。

金利を上げたのが31年ぶりであり、住宅ローンを支払っている人の家計に影響を与えることは事実ですが、なぜ金利を上げるのか、そして金利が上がることの影響の良い面、悪い面を多角的に報道をする必要があるんじゃないかなと思います。

 

このニュース記事をきっかけに色々考えたことがあります。いくつか連載で書いてみたいと思います。次は「日銀ってなんだろう」ということを、素人目線でむつかしい理屈無しに考えたいと思います。

 

私としては、こういう基本的な知識や考え方が、実は個人が投資する際の重要なリテラシーになると考えています。私は、投資歴30年ほどですが、難しい金融理論や技術的な市場分析とかからは距離を置いています。それよりも、経済の基本的な原理原則を理解することが大事だと感じています。

なぜ、私が日本の株式に投資をしないのか、その理由をこのシリーズの最後に伝えられたらいいと考えています。