1 図書館の現状
以前の記事で書いたのですが、今の多くの公立の図書館は朝からお年寄りが占拠しています。開館したら直ちに入館して主に新聞や雑誌を読んでいます。
こういう図書館で、現役世代や学生が閲覧席を使おうとすると、かなりのプレッシャーを感じます。
もちろん、シニア世代が新聞や雑誌を読むのも自由です。そのことについてとやかく言うつもりはありません。
でも他方で、やはり現役世代や学生などは使いにくい。
使いにくい理由としては、図書館が学習を禁止していることがあります。
「資格試験の勉強をしたり学生が試験勉強をするのは、遠慮してください。」ということです。新聞や雑誌を含め蔵書の閲覧はできるけれど、自分で持ち込んだ本や資料を読んだり勉強をすることはできない。
でも、現役世代や学生が図書館を使うとすると、大抵は勉強、自習をする場所を求めているのではないかという気がします。確実にそういう需要はある。
また、パソコンなどの電子機器の使用を禁止しているのも理由の一つではないかと思います。
現在、何らかの調べ物をしようとしたら、ネットで調べることは不可欠ですが、それが禁止されている。「図書館の外でやってください。」ということです。
調べ物をしようにも使いにくい。
現状は、多くの公立の図書館はお年寄りに新聞雑誌を読んでもらう場所になっています。自習を禁止して、電子機器の使用も制限してその他の世代が使いにくいから、図書館の利用者はお年寄りに偏っているわけです。
2 図書館で学習することは悪いことなのか?
私は昔からずっと疑問に思っていました。
そして、一度ならずこの疑問を口にしたこともあるのですが、大体「図書館は図書館にある本を読むためのところであって、自習をするところではない。」とか「図書館にある本を使う訳でもないのに、図書館で勉強するのはおかしい。」とか言われました。
でも、この理屈に私は納得できません。
「図書館はその蔵書を読む場所」という理屈が必然的に、自習を禁止することに結びつかないと思うからです。
そもそも図書館は国民や市民の教養を深めるためにあるもので、そのためには図書は不可欠ですから、国や地方公共団体が図書館を運営しています。
でも、教養を深めるために必要なものは図書に限りません。
だからこそ、最近(と言ってもかなり前からですが)では、図書館によっては蔵書だけでなく、視聴覚室があったり、現在ではインターネットに接続したパソコンがあったりする。図書だけではなく、DVDなどの記憶媒体やネットなどから、知識を吸収することが、最近の図書館では想定されてきているわけです。
こういう状況の下、多くの図書館で、利用できるものを図書館の蔵書や限定された(備え付けの)電子機器に限定し続ける理由とは一体何なのでしょうか。
すでに時代は、図書館が「勉強をするための場所」となることを求めているのではないだろうか?と私は思ってしまいます。
図書が図書館のものかどうかとか、電子機器が図書館備え付けかどうかとかいうのは、些末なことなのではないか?知識を吸収するための物が自分で購入した参考書や本であっても、あるいは持ち込んだパソコンで検索した情報であっても、そこで勉強、自習をすることは許されるというのが自然な考え方なのではないでしょうか?
3 新しい形の図書館
結局、図書館をどういう風に使ってほしいのかというのは、もっと自由に図書館側が決めていいのではないか。「図書館で自習は禁止」というのを当たり前の前提とすることなく。
そんなことを考えていたら、都内に見つけました(ここには具体的に書きませんが、ネットで検索したら簡単に見つかります。)。
正面から自習を認める図書館です。また図書館で声を出して読んだり、ディスカッションをすることも想定されていて、コワーキングスペースがあったりします。持ち込んだパソコンの使用が許されている席も多くあります。
行ってみたら、閲覧スペースがとても広く、席数も多く確保されていて、すごくいい感じでした。とても。
全体の印象としては、勉強している人が多い。勉強している人の属性としては、現役世代や学生など多岐にわたる印象です。もちろんシニア世代が新聞、雑誌を読んでいたりもする。
図書館が、全世代に開放されている感じを受けました。それぞれの人がそれぞれの方法で教養を身に着けようとしている。
やっぱり、図書館はいろいろな人が利用できるようにした方がいい。偏狭な理屈で排除する人を作らない方がいい。
4 図書館の役割
伝統的な図書館の在り方についても、それぞれに根拠があって、それなりの合理性はあったのだろうと思います。一概にダメだと言うつもりはありません。ただ、他方でそれがすべてだとも思わない。
時代に合わせて役割は変化してもいいんじゃないですかね。
新しい試みをしている図書館に行って思ったのですが、本を読んだり、パソコンのサイトを見たり、皆それぞれの方法で一生懸命に自分を向上させようとしていることが感じられました。こういうスペースが増えると、優秀な人材が自然と増えてきたりもするんじゃないですかね。
今の日本は人材を育成するモチベーションが著しく低い。また、優秀な人材を外国から受け入れようとしているようにも見えません。こういう弊害を打破するためにも自らで研鑽する人をサポートするような施設の存在は不可欠だと私は感じます。
また、様々な人材が育つことにより多様性を後押しすることにもなるような気がする。
図書館の役割は大きいと思う。