年功序列、終身雇用の終焉と言われるようになってから随分時間が経ったように思います。企業の視点から年功序列、終身雇用がうまく行かなくなっているのは確かです。
でも、働く人の側から見れば、状況は全然変わりません。
公務員、会社員の仕事を辞めたら、次の生活の見通しが立たない社会です。
普通に転職をしたら、間違いなく、待遇はどんどん悪くなります。仕事を辞めたいという事情があったとして、その状況が改善するかというと、かなり怪しい。そういう社会です。
だから、本当に多くの人が、終身雇用制度が終焉を迎えたという現在の社会で組織にしがみついて生活しています。端的に言えば、仕事を辞めたくても辞められない状況です。
よく言われますが、アメリカ社会との対比で、日本の社会は企業が労働者を解雇しにくい制度になっているから、失業率が低く、労働者の生活は安定している。その反面、離職した場合の転職はしにくい。
一長一短のように言われています。
でも、よく考えてみると、現在の日本社会で労働者が解雇されず、転職しにくいことがそんなにいいことなのでしょうか?「一長」と言えるのでしょうか?
年功序列、終身雇用がうまくいかなくなっているのに、その制度を維持していることの歪みは大きく顕在化しています。転職できないから、本来組織にとどまるべきでない人や、そこでは役に立たない人が留まることになり組織は全体として停滞します。組織も「無茶な要求を労働者にしても、どうせ辞めない」と高を括っているから、無茶な組織運営がまかり通っている。
これが現在の日本企業がうまく機能しない根本的な要因だと思います。
イーロンマスク氏の解雇が問題になって、日本ではこんなことはできないから大丈夫という言説が流れています。
イーロンマスク氏のやり方はドラスティックすぎるのかもしれません(そんなこともないようにも思いますが)。でも、逆に言えば、日本では、そこまでドラスティックでない形でも解雇はできないから、組織に不要な人材が蓄積します。
不要な人材はいろいろです。パワハラ、セクハラをする人、保身を図って本来の仕事をしない幹部職員、制度を悪用して休暇三昧の職員、「働かないおじさん」など枚挙にいとまはありません。
こういう人が組織に不要な人であることは論を待たないにもかかわらず、解雇はできません。本当に、それでいいのでしょうか。
こういう人たちの被害を受けている人がいます。仕事を押し付けられ、ハラスメントを受けています。前にも書きましたが、こういう人たちは、劣悪な職場環境で仕事を押し付けられ、本来の仕事をしてない人の分まで肩代わりをして働いています。
メンタルダウンする人も少なくないと思います。メンタルダウンした人がどのくらいいるかという統計は、おそらくどこの企業も国の機関も出していませんので数値はわかりませんが、肌感覚としては、間違いなく増えていると思います。
でも、こういう今頑張っている人たちがメンタルダウンしたとしても、それはメンタルダウンした人が悪いわけではありません。そういう「弱さ」は人として当たり前のことをするからこそ生じるもので、欠点ではありません。
本来的な意味で、そういう組織に問題があるのです。
私は、そういう現状に大きな疑問を覚えて、退職をしました。
だから、しわ寄せを受けている、仕事を誠実に処理している人が健康な生活を続けられることを切に願っています。
それとともに、これ以上がんばらなくてもいいのではないかとも思います。
今の組織でがんばるよりも、よりよい人生を送る方法があるのではないかと思います。それが、いい社会を作ることに繋がるのではないかとさえ、考えています。
優しいからハラスメントを受けている人、人の分まで仕事を押し付けられている人、そういう誠実な人は、本来的に能力のある人だと思います。
今の組織に留まっていると、その能力はすり減るばかりで、モチベーションが低下し、もしかすると、将来「働かないおじさん」になってしまうかもしれません。組織を辞めて、チャレンジしてみた方がいいと思います。
チャレンジしたらどうなるか、具体的には、まだ私も模索中ですが、これからも退職後の生活やチャレンジの状況をお知らせしたいと思っています。私は、そういうことを情報発信することを、人生の一つの柱としてやっていけたらいいなと思っています。
ありがたい話です(本当にありがたいと思います)が、「仕事をやめたのならば一緒にやりませんか?」と誘ってくださった方もいました。でも、こういう個人的な事情で人生をうまく構築できたとしても、発信する情報としては意味がないと考えています。
その方には、私の想いを説明して、(本当に涙をのんで)お断りしました。
誰でも参考になるような方法で、退職後の人生を構築すること、これが今の私の目標です。うまく行くかどうかはわかりません。でも、将来、大きな財産になると信じてやっていきたいと考えています。