スタイルのある生活~早期退職50代男子ハタさんの試行錯誤~

公務員を退職するに至る経緯からその後の生活まで

「出世望まぬ公務員」の記事を、公務員の管理職をやっていた視点から考えてみた。

今日のネット記事に『出世望まぬ公務員「勉強時間ない」「昇進よりも家庭」 自治体は苦悩』と出ていました。

記事は、「勉強する時間がない」「昇進より家庭を優先という意識」が背景にあるとみられると書いています。記事に対するコメントを見ると、公務員なのにそういう意識はどうなのかという趣旨の投稿が多く見られます。

税金から給料をもらっているのですから、「勉強しろよ」「仕事をおろそかにするな」という意見はもっともです。

 

でも、本当に個々の公務員の意識の問題なんでしょうか?

記事の末尾で「試験を受けられない理由」も大事だと言う学者の方のコメントもありますが、もう少し具体的に考えてみたいと思います。

 

私も今年退職するまで、公務員の管理職として働いていました。国の機関でしたので記事にある地方公務員と全く同じではありませんが、根底で共通する部分もあると思います。個人の意見ですが書いてみたいと思います。

私がいた職場でも、管理職になるための試験を受けない人が多く、受験資格のある人に受験するように面談をしたり、受験についての回覧が回ったり、あの手この手で受験をするように促していました。

 

受験を促す際にアピールされていたのが、大きく2つです。

1 管理職になるとやりがいがある

2 共働きなどの家庭の事情は組織が最大限考慮する

確かに管理職になれば大きな視点を持ちながら仕事をしなければならないことは増えます。部下職員の評価などは、自分のことだけ考えていたのではできませんし、自分の部署の業務も言われたことだけをやればいいのではなく、組織全体から見た位置づけを理解したうえで遂行するようにリードしなければならない。こういう仕事には「やりがい」がある。

また、働き方改革などで勤務時間の管理も進み、家庭の事情も考慮しながら働けるようになってきている。管理職になると部下職員だったころに比べて自由はきかなくなるかもしれないけれど、そういう休暇制度(育児休業など)を利用したら、十分やっていける。

これが組織側の言い分です。

 

しかし、こういう「ある種おいしい話」には、必ず裏があります。

1 やりがいは本当にあるのか

やりがいは、どんどん無くなっています。

私が退職する頃には、組織としてどういうサービスを提供するか検討する等という建設的な仕事はほぼ無くなっていました。上命下達で仕事は行われ、現場の意見は全く吸い上げられません。

その代わり、不祥事が起きた時のために帳簿をつけるとか、職員の業務管理の報告を上げるといった仕事がどんどん増えていました。私は「アリバイ作り」の仕事と呼んでいましたが、巷では「ブルシットジョブ」とも言うようです。

例えば、管理職のかなり本質的な仕事である部下職員の評価も、制度がころころ変わり、その制度を理解するのに膨大な時間を要した上、そのフォーマットに沿っていないなどという指導が上司から入り、評価の内容どころではありません。

こういう増える一方の(誤解を恐れずに言えば)つまらない仕事を管理するのが管理職になっているわけです。

 

2 働き方改革で働きやすくなったか

働き方改革で働きやすくなったかというと、少なくとも管理職から見ると逆でした。、働き方改革に沿った職場の運営になっているかどうかを報告する仕事が山のようにありました。実態把握が必要なことは否定しませんが、異常な量でした。

当然のことながら、部下職員の残業などについて異常に神経質にならなければならない。仕事が残っていれば肩代わりしなければなりません。休暇など全然取れず、自分の生活どころではありません。ちなみに私も退職することにしてから、有給休暇の消化は1日もできませんでした。

更に、管理職になるとわざわざ遠くの職場に異動になるという謎のルールもありました。今でも、なぜそんなことがまかり通っていたのかはわかりません。組織に対する忠誠心とかを見ているんですかね?

結論としては、管理職になってしまったら、ほぼ生活が回らなくなるのです。

 

3 根本的な問題

子育て世代の保護、働き方改革で働く時間が少なくなります。でも仕事は増える一方です。

それを肩代わりするのは、制度により保護されない人、例えば子育てや介護をしていない人です。「独身の仕事のできる職員」の仕事量は常軌を逸していました。「勉強する時間がない」と言っている人は、本当にやる気のない意識の低い人である可能性も否定はできませんが、そうではない可能性も十分あると思います。

 

更に、管理職になれば、自分が子育て世代であったとしても、部下職員の子育て世代の仕事を肩代わりしなければならないのです。

理念だけでは職場はよくなりませんが、組織はスローガンだけで現実の問題に向き合おうとしません。

「昇進より家庭を大切にする」と言えばそうかもしれませんが、受験をしないのは、こういう今の状況に「No」という意思表示をしているだけのような気がしてなりません。

 

 

退職する頃 私は正直うんざりしていました。

でも、うんざりしているのは私だけではなかったはずです。こういうことに試験を受験する前の人たちも気づいているのです。

少なくとも意識が低いということで片づけられる問題ではないと思います。

 

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