スタイルのある生活~早期退職50代男子ハタさんの試行錯誤~

公務員を退職するに至る経緯からその後の生活まで

退職から人生再建へのモデル(3) ~労働市場の現状 その1~

1 人手は足りないけど就職はできない不思議な現状

最初に身も蓋もない現状を書きます。

日本の労働市場は終わっています。特に中高年、それも男性については・・・。

のっけから、暗い気持ちにさせて申し訳ありません。

 

いろいろなサイトにも書かれていると思います。「中高年の職探しは厳しい。」と、くどいほど出てくると思います。

退職するには、「スキルを磨いて次に備えろ。」などという光明を示すような記事もありますが、読んでみると「スキルを磨け」と繰り返すばかりで、スキルを磨いたら、具体的にどんないいことがあるのかわかりません。

 

 

具体的に現在の日本の中高年を取り巻く労働市場はどうなっているのでしょうか。

自分自身、退職をした後、就職活動をしようとした時、まずこれが具体的にわかりませんでした。疑問点としては、「人手が足りないとあれだけ言われているのに、就職、職探しは困難。」というのはどういうことだろう????ということでした。

 

自分自身の前職(公務員)を思い出してみても、確かに仕事量に比べて人が少なすぎました。他方で、採用試験の希望者は減っていて、欠員が生じても人が来ないという事態が常態化していました。

私は、退職後は前職の臨時採用には応じないとはっきり意思表示をしてきたのですが、現在でも臨時で来ないかという話が非公式に来ます。それだけ人がいなくて困っている。

 

ニュースなどでも、運送業界、介護業界、警備業界、飲食業界の人手不足などは長期にわたり、何度も報道されています。でも、今に至るまで、それが解消されたという話は聞かない。

 

 

2 「人が足りない」とはどういうことか。

日本の2022年の有効求人倍率は、1.28です。

求職者1人あたり、1.28の求人があるということです。この数字からすると、そんなに人手不足でもないし、職探しが難航するとも感じられない。なんだか、バラ色な感じのする数字ですよね。

 

ただ、冒頭に書いたように、現実は全く異なります。

全く就職できない現状があるというのは、どういうことなのか? 企業側からすれば、1.28の求人を出しても、求職者は1人しかいないということですから、簡単に就職できないというのは、数字上はおかしなことです。

 

もちろん、求職活動をしている人は、「仕事ならなんでもいい」訳ではありません。また、求人をかけている企業等にしても、「誰でもいい。」わけではありません。だから、数字と実感がずれることは、そんなにおかしなことではない。

 

ただ、1.28という数字があるのに、全然職が見つからないというのは、あまりにおかしい。

 

 

なぜこんなことになるのか、実態を想像してみるとわかりますが、運送、介護などの業界は、求人を出しても出しても人が来ない。だから、求職者よりも求人者が圧倒的に多くなります。

他方で、それ以外のある程度安定している業界については、逆になります。

この2つの方向性の数字の平均が1.28ということになります。

 

 

結論としては、運送、介護など、いろいろな要因から求職者が避けるような業界の求人は多いけれど、それ以外の求人は圧倒的に少ないというのが現状です。

つまり「人が足りない」というのは、一部の業界について激しく人が足りないということを意味しているにすぎません。それ以外の求人は、数として求人はそれほどありません(ただ、人が足りているということになるのかは後述)。

 

 

3 運送、介護など以外の職種では、人は足りているのか。

過労死などが問題となり、働き方改革が叫ばれています。

この時代の流れからは、どんな職場でも人が足りず、とても忙しい。やる事は増えるけれど、人は増えない。そういう現状が透けて見えてきます。

自分の前職の経験からも、人が足りないのが常態化していました。

 

でも、このことは2の有効求人倍率の議論と矛盾します。だって現実に求人数は少ないのですから。職場がそんなに人手不足なのであれば、もっと求人があるのではないか。

 

 

これが意味するところは、運送、介護など「以外の職種」では、人が足りなくても求人が出ていないということです。

 

なぜそんなことになるのか。一つの理由は(そもそも論になりますが)、日本の労働法制は、解雇が極めて厳しく制限されていることです。犯罪を犯すとかいうレベルの「余程のこと」が無ければ、解雇はされません。会社の運営がうまくいかなくて解雇せざるを得ない場合にも、厳しい制限があります(ここでは詳しくは述べません。)。

 

今、「働かないおじさん」が問題になっています。「おじさんだけじゃないだろう。」という点は置いておくとして、「働かない人達についても、クビにはできない。」というところがポイントです。(*)

 

ものすごく単純化して言うと、一旦採用してしまうと、その人がどんなにボンクラであっても、ずっと最後まで(正社員なら定年まで、パートでも任期まで)雇い続けなければなりませんので組織内にそういう人が滞留する。だから、「おいそれ」とは採用できない。

人の採用については極めて抑制的になる反面、大量の不良人材をため込んでいるのが現状なのです。

 

現場は使える人がいないから人手不足というのが多くの企業、組織の現状になります。運送、介護などの業界の人手不足とは、意味合いが異なりますが、人手が足りないことに変わりはありません。

人手は不足しているけれど、運送、介護などの業界とは異なり、求人は出さないということです。

 

* この点は、少し注意が必要です。働かない人をクビにできないのは確かに問題なのですが、「解雇をしやすい」という制度を安直に作ってしまうと、不当な解雇が横行することになりかねません。現に経済界からの要望は強く、会社の状況によって「柔軟に(会社都合で)」解雇が認められる制度が望まれています。

 

4 労働市場の現状

まとめると、

(1)運送、介護などの一部の業種では、人手不足が深刻で、多くの求人がある。

(2)運送、介護など「以外の業種」では、人手不足であることは同じだが、求人は少ない。

これが、大局的に見た労働市場の現状です。数字、制度などから見た客観的な分析です。

次回は、実感としてわかった労働市場の現状を述べてみたいと思います。