今まで、投資の重要性について書いてきましたが、でも投資はいいことばかりなのでしょうか。
投資を勧められた際に、私自身とても疑問に思いました。
これまで私は、個人の金融資産としてアメリカのインデックス投資信託がよいのではないかと書いてきました。自分自身の20年以上の経験からも悪いものでなかったと思います。
しかし、このような手法にも条件があると考えています。個人的な見解ですが、述べてみます。
それは、投資する対象(私の場合はインデックス投資信託)の市場で、資本主義経済制度が正常に機能していることです。
簡単に言えば、ちゃんとした市場であることです。
ちゃんとした市場とは、
1 市場ができる限り公正に運用されていること
2 資本主義経済制度の理念から、成長が予測できること
が担保されている市場です。
逆に言うと、こういう条件が無くなった場合には、投資の資金はすぐに引き上げた方がいいと考えています。それぞれを、わかりやすいように日本とアメリカを比較してみます。
1 市場が公正に運用されていること
資本主義経済においても、政府の介入などが全くない市場はおそらく存在しません。
ただ、その程度は市場によって大きな違いがあります。
政府などの介入が最も少なく、自由競争を重んじるのがアメリカだと言われています。政治の影響を全く受けない訳ではありませんが、厳格なルールのもと公正に市場を運用しようとする姿勢があります。
それに対して、日本では、戦後に限って見ても、資本主義経済制度を採用している建前なのに、企業間で自由競争が大きく制限されています。下請けと言われる中小企業は、大企業に買ってもらうために熾烈な競争をしていますが、元請けの大企業などはそうではありません。
大企業は、かつては「護送船団方式」で利益を上げてきました。詳しくは述べませんが、これは自由競争をするというよりは、国の政策に沿って大企業が資本投下を行い国全体で利益を出していく方法です。
バブルが崩壊して以降は「護送船団方式」は無くなりましたが、最近では、大企業は自由競争により、よりよい製品を生産して利益を上げるよりは、人件費をある意味不当に抑制して利益を確保して内部留保をして生き延びています。
仮に利益が上がったとしても、資本主義社会では当たり前の賃金は上げないようにして、それを内部留保としてため込むということを国を挙げてやってきたように見えます。失われた20年、30年の時代でも利益を出していた企業はありましたが、給料が上がることはありませんでした。
最近、インフレが進んで庶民の暮らしが・・・と言われてから、国や経団連などが示し合わせて遅まきながら賃上げをする方向で動いています。賃上げが国やどこかの団体の思惑でしか上がらないと言うのは本来はとてもおかしなことです。
アメリカと比較すると、政府などの介入の程度が大きいことは明らかだと思います。
そういう制度や政策を選択したのは、国民が選挙で選んだ政治家などですから、私は文句を言うつもりはありません。
ただ、自分の資産を日本で運用するかどうかということになれば別問題です。絶対に、日本では運用しません。
現に自分が運用をしてきた20年間、日本の市場の金融商品に投資をしていたら、利益が出たかどうかは、怪しいと思います。このことは、日本の代表的な投資信託の過去20年の値動きを見てみればわかります。
2 成長が予測できること
インデックス投資信託に投資をするということは、性質上、市場全体に投資をしていようなものです。だから、市場として成長するかどうかがカギとなります。
資本主義経済というのは、基本的には拡大して利益を出していくものです。物が売れたら利益となり、それが賃金に反映され、その賃金でまた人が物を買うという循環で社会全体が潤っていきます。物を買う人がだんだん増えていけば、自然と社会全体が豊かになる。ものすごく簡単に言うと、そういう側面が確かにあります。
現代的な問題ですが、日本では、少子化により人口が減少しています。
これは、資本主義経済制度を維持するのであれば根本的にヤバい事態です。物を買う人がどんどんいなくなっているのです。
少子化に進んでも、労働者一人当たりの生産性を上げるとか、輸出産業を育成するなどの対策はあると言われていますが、そういう政策が始まる様子はありません(あるのかもしれませんが、知りません。)。
これに対し、日本と比較するとアメリカは将来的に人口はまだまだ増加すると予測されています。生産性も日本より高いことは、よく言われるとおりです。
こういう状況を見れば、個人としての投資先としては、どう転んでも日本にはなりません。
現在、個人的にはアメリカの投資信託に投資していますが、ここに書いた条件が満たされなくなったら、そのときは投資から撤退すべき時期だと思います。