前回、現在の子育て環境の問題点として、
1 体力的な負担が大きすぎる
2 経済的、金銭的な負担が大きい
3 精神的負担が大きく、生活が硬直化する
ということを挙げました。
解決法を考えてみたいと思います。
個人的な思い付きのようなものですが、こういうことを考えることで、少子化問題がいかに国の制度の根本に関わっているかがわかると思います。制度の根本問題について議論がされることを願ってやみません。
1 体力的な負担について
子育てをしながら働くというのは、大きな負担がついてまわります。
この負担をどうするのか。従来の生活様式を前提とする限りはこの問題は解決しないと思います。専業主婦を前提とし、実家や地域の援助が見込めるような社会ではなくなってから随分経っていますが、役割分担は従来のままです。男女の役割分担、地域と家庭の役割分担、学校と家庭の役割分担、家庭と職場の役割分担。
男女の関係では、女性が子育てを一手に担うことが不可能という認識はできてきましたが、そこに夫も関与したら解決するという安易な雰囲気があります。
地域との関係では、地域社会は昔のように防犯機能や教育機能は期待できない。
だからと言って、教育、防犯、保育などの機能が、なし崩し的に学校に押し付けられているのが現状ですが、その期待に学校は答えられない(無理に決まっています。)。
一つのアイディアとしては、子供の居場所を確保する制度の創設が考えられます。生まれたばかりの子供から小学校を終了するくらいまで、日中(朝から夜まで)の生活をする場所を制度として提供する。そこでは食事や教育を提供して、原則として親とは仕事が終わって次の朝までも一緒に過ごすだけにする。
現在の制度を前提とすると荒唐無稽と考えられるかもしれません。
でも、保育園に入れないという問題の解決に10年スパンの時間をかけ、男性や職場の意識変革や協力に過大な期待を抱き、PTAは親の負担が・・とか議論している場合では、もはやないと思うのです。
2 経済的、経済的負担、精神的負担について
根本的な経済対策が必要だと考えられます。
労働法制も絡みますが、現在のような終身雇用、年功序列の制度は完全に時代遅れであるにも関わらず、今なお温存されています。
ただ、いきなりアメリカのような自由競争社会というのは日本人にとっては相当ハードルが高いように思います。肌感覚ですが。
では、終身雇用、年功序列のよくないところは具体的には何なのでしょうか。
日本人は会社がつぶれることを嫌います。大企業がつぶれそうになると国を挙げて大騒ぎです。税金を投入して一企業を救ったこともあります。このメンタリティーを捨て去ることは難しいかもしれません。考えてみると競争力がないからと言って、その企業をつぶせばいいというのは、ある意味極論です。ぶっつぶさなくても使えるようにできないのか?
一つの解決策は、労働の流動性を高めることだと思います。
企業をつぶさないような制度を温存するとしても、働く人が自由に働く場を変えられる(企業にとっては必要のない人材を解雇したり、事後的に必要な人材を採用できる)制度を作ることではないでしょうか。
「働かないおじさん」問題とか言われていますが、少子化の裏返しの高齢化社会になるに伴い、問題は顕在化しています。他方で、優秀な人材が合わない組織で腐っていっている。転職などで経験を積むことでさらなる能力の開花が見込める人材も同じ場所にいることで腐ってしまう。
ある職場を辞めたら、次の企業では即戦力でなければ採用しないという、できるはずのない要求はもうやめるべきだと思います。次の職場に移行する際のトレーニング込みで転職を考える制度を創設することを考えてはどうでしょうか。
職業訓練のハイレベルバージョンのようなイメージでしょうか。
転職しようとする人のハードルを下げ、転職によって給料が極端にダウンしない制度を作ること、本当の意味での同一労働、同一賃金を実現することだと思います。
経済の発展にも寄与するはずなのに、なぜか長い間これができない。
子育てを躊躇させるのは、目の前の給料が少ないというのもありますが、よりよい生活を目指せないという硬直した制度にも問題があります。
自分の能力に応じた報酬が得られるような社会であれば、それを見込んだ余裕を持って子育てをするという見通しが立てられるのです。
3 まとめ
結局、少子化問題を解決するには、(1)の冒頭で述べたように
1 保育、教育制度を見直す
子供の居場所を確保して、そこで食事、教育などトータルなサービスが受けられる制度を創設する。
2 年功序列、終身雇用制度を作り直して、労働力の流動化を図る
労働力の流動化を促し、能力のある人の活用を図る。制度の創設により、新たな産業も出てくると考えられます。そういう制度を維持、発展させるためには、能力のある人材で運営できるようにする。
ということになるのではないかと思います。
思い付きの一試案ですが、これに類することが政治の場で議論がされる必要があると思います。
現政権の岸田総理であるか、次の政権であるか、また、与党であるか野党であるか、わかりませんが、真摯に議論をして実現しようとして動いておられる方を応援していこうと思います。