スタイルのある生活~早期退職50代男子ハタさんの試行錯誤~

公務員を退職するに至る経緯からその後の生活まで

呪術廻戦0と村上春樹さんの小説「7番目の男」

映画「呪術廻戦0」を見ました。よかったです。

 

人の暗部をえぐるようなアニメですが、考えさせる作品です。

正しいことばかりを追い求める現代社会で、なんでこういう作品が出てくるんだろうなとも思いました。ジブリがアニメを日本の誇るべき文化へ押し上げた後、更にその文化を広げることに成功しているように思いました。

 

怖れ、恨み、呪いという人間の負の感情がテーマです。

ただ、道徳や情という正の感情と表裏のものとしつつも、相反するものとは描いていないところがいい。

 

一人の人間の心には、明るいところもあれば暗いところもある。それを見て見ぬふりをしよう、暗部をどこかに押し込めようとするのが人間の歴史です。現代社会でも激しく人間の負の感情を否定し、拒絶しようとして、正しいことを追い求めるのは、テレビを漫然と見ているだけでよくわかります。

 

でも、暗部を否定し抑圧すると歪みが生じます。暗部も人間にとっては必要なものです。

 

精神分析でも、負の感情を無意識に押し込めることで人格に不協和音が生じるのを精神的な病と考えますが、その反面、ユングなどは想像の源とも考えます。

芸術は暗部の表出とも考えられます。規則正しい芸術というのはちょっと魅力が乏しい。負の感情の方が実は生命力に満ちていてみずみずしい。宗教的な絵画や浮世絵などで、おどろおどろしいものがよくあります。

昔話や童話には、残酷なものもたくさんあります。でも、皆がそれに惹かれるから、長い歴史を経ても残っている。正しいファンタジーには誰も魅力を感じないでしょう(それがいいと声高に叫ぶ人たちも存在しますが)。

 

 

結局、人間は自分の負の部分に向き合うことで成長するし、人生がみずみずしいものとなるのではないかと思います。負の感情(の経験)に支えられているからこそ余計に深い愛情もあると思います。

 

 

村上春樹さんの短編で「7番目の男」という作品があります。「レキシントンの幽霊」という短編集に収められています。

主人公は、津波の際に自分だけ逃げだし友人を失ってしまい、その後友人の恨みから逃れようとしますが・・・、というストーリーですが、人間の感情の負の部分に徹底的に向かった(向き合わざるを得なかった)ことで、次の大きな視野を手に入れます。

ある程度大人になってから読むと、なんだかとても心が温かくなったのを覚えています。

 

とても感動したのですが、これ以上書くとネタバレになるところが歯がゆいです(笑)。