年金問題、少子高齢化など、連日のようにニュースで取り上げられています。
少子化の裏返しとして高齢者が溢れる。
「少子化をなんとかしなければ」という世の中の雰囲気とともに、高齢者に風当たりが強くなっているように思うのは私だけでしょうか。高齢者は事故率が高い。高齢者は歩くのが遅く道の真ん中で立ち止まる。話を聞かないし、クレーマーもいる。
人がこんなに長生きをしなかった時代は、高齢者は長老として敬われ大切にされていました。でも、今や、街には高齢者が溢れ、邪魔者のように扱われる。
そういう時代背景で「プラン75」という政策が実行されるという映画です。
倍賞美津子さん主演で、国民は75歳になると自ら生死を選択することができる法律が成立した。主人公は、まだまだ働く意欲もあり一緒に趣味を楽しむ友人もいて、前向きに人生を送っていたのですが、友人も様々な事情から去っていき、失業を契機に世の中から拒絶されていきます。
倍賞さん演じる主人公は、結局、死ぬことを選びますが、役所の担当者、心理的なサポート担当者などプラン75を支える立場の人が疑問を感じて・・・。
作品の底に流れるのは高齢者を不要とする社会の暗黙の前提です。
こんな社会になったら怖いな・・・と思いながら見ていたのですが、ふと気づきました。既に高齢者を不要と考える社会になっているのではないか。法律はないけれど、国民の心の中にプラン75があるのではないか。
正面から「高齢者は不要」とは言いません。
でも、定年延長、総活躍社会などの政策から伺われるのは、働けない高齢者は要らないという価値観のような気がします。
働くから価値があるのではなく、存在自体に価値があるということを、再認識する必要があるのではないかと思います。働く場など経済的な場面だけではなく、生きていく中での具体的な価値とは何か、考えさせられる映画でした。
ラストシーンが大きな解決を暗示しているような気がしました(とてもいいシーンだと思いました。)。