1 現在の日本経済への疑問
前回、失われた30年といわれる期間中に政府と日銀が異次元の金融緩和を行い、通貨が日本市場にジャブジャブになったことを述べました。
その後、安倍政権のときにアベノミクス政策が取られました。法人税減税を行い、金融緩和を続けるなどしました。
これは民間企業に「お金を借りてください。どんどん融資します。税金も安くします。」と言っているようなものです。でも、景気は上向かなかった。
2 民間企業はどう動いたのか?
こんなに超追い風の状況の中、日本の企業(大企業)は、超低金利で調達した資金はどう使ったのか?
実はこれは私こねくり回すまでもなく、内閣府のレポートに出ています。
これを私なりに要約してみます。
結論としては、以下のような方法で内部留保を積みあげたということだと思います。
(1)低金利で借りたお金でそれまでの借金を返済した。
低金利で融資を受けることができたので、それまでの金利の高い借金を返済しました。通常であれば身軽になったところで次への設備投資や研究費などに向かうはずですが、必ずしもそうならず、いざという時に備えるお金などにしてため込んだ。
根本的なことを言えば、資本主義社会の企業のモデルは、
①借金をする(借金)
⇒②本業に投資する
⇒③借金の金利を上回る利益を出す
⇒④金利支払、次への投資、賃金に使う
このサイクル(投資と分配のサイクル)で成長していくという流れになりますが、本業で利益を出すよりも優先して借金の返済をした。
借金をするとバブルがはじけた時のように急に返済を迫られるから、貯金(内部留保)をする。そして、借金をせず貯金の範囲で経済活動を行おうとしたということです。
(2)投資を国内にせず国外にすることにしたという理由で現預金とした。
素人の私としてはちょっと馴染みのない話ですが、海外の会社をM&Aするために資金を調達しておく必要があると言うことで内部留保をしたという説明がされることがあります。
でも、M&Aは必ずしも現金でやり取りをしなければならないわけではなく、さらに言えば、日本の大企業の多くがM&Aを盛んに繰り返しているという話を聞いたことが無いのは私だけでしょうか?
要するに口実を作って、いざという時のために貯金(内部留保)をしたという感じを受けます。
(3)本業の利益はコストカットで生み出した。
(1)の説明と被りますが、本来の利益の出し方(借金⇒本業で利益⇒利益を分配)という流れではなく、本業の利益を賃金を上げないなどコストカットによって出す体質になったということです。そうやって低金利で借りたお金を活用することなく、コストをカットして、出した利益は内部留保に積み上げた。
3 日本経済の現状
数字を見てみることにします。
市場に出回っている通貨の量を示すマネーストック(M3)という数字があります。
これが大体1600兆円。
それに対して日本企業の内部留保の額が約600兆円。このうちの現預金が300兆円。(*)
* 内部留保600兆円のうち、実際に動いていない現金などが300兆円ということ
つまり、1600兆円のお金が世の中に出ているのに、企業が動かしていないお金が300兆円あるということです。いくら日銀が金利を下げて資金を融通しやすいようにしてもお金は市場に出ない。
他の数字とも比較してみます。
・国家予算が約110兆円
・日本のGDPが600兆円
国家予算の3倍違いお金が動いていない。国家予算を使って経済対策をしても、その3倍をため込んでいると見ることができます。
通常の市場であれば、超低金利でお金を借りることができて、税金も安くなり、円安になっている状態というのは、日本の基幹産業の多くを占める輸出産業にとって超追い風です。
国が苦労をして経済対策を打っても、民間企業は本業に精を出さず、それどころかそれを利用してため込む構図です。
これほどの金額をため込んでいるのなら、ジャブジャブにしてもハイパーインフレが起きないことも理解できます。通貨が市場に出ていないわけです。
4 企業が内部留保をする理由
様々なことが言われますが、大きな問題として必ず出てくるのが、バブル崩壊が経営者に与えた影響です。
バブルまでは絶好調だったのに、バブルがはじけた瞬間銀行による貸し剝がしが横行するようになりました。前述した借金をして利益を出すというサイクルを取れなくなってしまったのみならず、返済を迫られどんなに大きな企業でも経営危機に陥ったという体験が、経営者に借金ではなく内部留保の範囲で本業をやる。できるだけ内部留保をためこむという体質に転換させたということです。
これは現実に起きたことで私も理解できます。だけど、私にはどうしてもわからないことがある。
理解はできるけど、一体何年前の話?
そういう制度が問題なら変えたらいいじゃないかと思います。ここでは詳しく述べませんが日本の銀行の特殊性もあると思います。だけど、大企業を主体とする経済団体は政治に強い影響力があります。それを使って改善することを誰も考えなかったのか?少なくとも、そういう国の大きな体制を変えようという問題提起がされたと私は聞いたことがありません。
逆に、自分は雇われた社長だから、任期中大きな失敗をしたくないという匂いを感じます。私の感想ですけど。
そして、推測ですけど、メディアもこういうことはスポンサーに配慮してほぼ全く報道しないんじゃないですかね。
私の感想はともかく、日本の経済の本質的な問題点がここにあると私は考えています。
次回は、このような理解を通じて、自分自身が個人として取るべき態度について書いてみたいと思います。
