58歳で早期退職をしましたが、現在の心境としては、「後悔はなく、条件が整えば退職は絶対おすすめ」だと思っています。
私の職場は、国の機関でした。
30年以上勤めて58歳でしたから、もう少し頑張ればめでたく定年退職というところまで来ていました。そんな状況でも強く感じていたことがあり、早期退職を決断しました。
以下、組織と縁を切ろうと考えた経緯を書いてみようと思います。
1 職場では、理想を実現する制度が次々に導入された
ワークライフバランス、男女共同参画、最近では働き方改革と立て続けに政策が打ち出されました。
民間企業ではまだまだその理念が行き渡らず、理想とは程遠い状況が続いていると言われていますが、国の機関は、率先して政策を実行していかなければならないので、ワークライフバランスと言われれば育児休業制度などの制度を作り、男女共同参画と言えば女性の昇進を後押しする組織運営を行い、働き方改革と言えば勤務時間を厳格に管理して超過勤務を削減するなどしていました。
理念を実行しようとすることは悪いことではないのですが、どんなことにもメリットとデメリットがあります。民間企業で制度を導入して実行としていこうというモチベーションが低いのはデメリットが解消されていないからだと思います。
2 理想を追求することのデメリット
制度は導入されて終わりではありません。
育児休業制度が導入されたら、職場の働き手、マンパワーは減ります。仕事は減りません。そこをどうするかを考えていかなければなりません。
女性の地位向上を目指して、女性だからということで昇進させると実力を伴わない人が昇進する場合が出てきます。育児休業などを取得してその間は休業していた人が、ずっと働いている人と同じように昇進すると、単純な話、仕事の経験は少なくなります。
働き方改革で残業をしないようにしたら、積みあがった仕事は処理できなくなります。
制度を導入したら、こういう理想と現実のギャップを埋めていく作業が必要です。
当然想定されるこういう問題について、制度が導入された後に、どうしたらうまく行くのか検証しながら実行してみて、問題があればその都度、運用方法を改めたり、必要があれば制度自体を改正することが必要です。でも、現実はそうではありません。
私のいた職場のことを紹介します。
こういった問題点を解決するために、管理職の会議などで繰り返し言われたことがあります。「仕事を合理的に行えばできる」と。それだけです。おそらく今でも変わっていないと思います。
3 デメリットを回避する現実的な方法
仕事はたくさんあるのにマンパワーが減っていくという状況を解消しようとしてできることは、大きく2つです。
一つは私の職場が言っていたように「仕事を合理的にやって仕事量を減らすこと」ですが、お察しのとおり、そんなことできるくらいならとっくにやっているという職場がほとんどだと思います。これでは問題は解決しない。
そこで、もう一つの方法をとることになります。
それは「できる人に仕事を集中する」という方法です。「できない人」には頼めないので、できる人にやらせる。育児休業などを取っていなくて、きちんと経験をして仕事のできる、黙ってサービス残業をしてくれる人にやってもらうということです。
本当に残念ですが、これが現実だと思います。
当然、激しい量の仕事がそういう人たちに押し寄せることになります。
4 私の考えた現状を変える方法
私は現場の管理職だったので、自分でも溢れた仕事を引き受けてきましたし、仕事のできる一部の職員に多くの仕事を担ってもらいました。もちろん、ことあるごとに職場の状況を報告して改善する方策を検討したりしましたが、実現はしませんでした。
退職する直前、この状況は大きなストレスでした。
この時、考えました。「組織の中にいて頑張っても、少なくともすぐには、控えめに言って10年は変わらないから、組織を支えるのはやめよう」と。
私は、同じように退職をする人が増えるといいなと思います。どんどん人が辞めるようになれば、組織としてその対策を取らざるを得なくなると思います。現状は、もうそれしかないように思います。
実は、そういう傾向はかなり顕著になってきています。報道でも国家公務員試験を受ける人が減っていると言われています。現実に試験会場は申し込みをして受けに来ない人がたくさんいて、空席だらけです。
長く務めた職場を辞めるのは、相当ハードルが高いものです。
でも、現実と理念の間を埋めるために、無理に無理を重ねているのであれば、健康を害する前に、できる限り早期に退職することを勧めます。いつまでも個人が現実と理念の間を埋めることなどできません。
私の経験が何かの参考になればいいと思っています。これからも情報発信をしていこうと思います。